音楽的に創造する
スタジオを飛び出し、外の音を録音する「フィールド・レコーディング」という行為がある。記録としてはもちろん、録音した音を素材に、音楽を創造するための作曲手法としても発展して来た。無意識だった周囲の音に意識的にさせるこの行為は、聴く事を通して世界をどのように再発見するか?そんな創造的な態度が求められるプロセスである。高品質なデジタルポータブルレコーダーの発展が、この行為を拡大させて来たが、形ある物の創造に目を向けた時、デジタルテクノロジーの発展は、どのように創造性を引き出して来ただろうか?
フィールド・レコーディングがもたらす視点の変化を、形ある物の創造に展開してみる。ポータブルレコーダーを、ハンディー3Dスキャナーに持ち替え、スタジオを飛び出して街に出る。採取したデータを見立て、新たな造形を創り上げるためにデジタル上で編集・再創造するプラクティス。形なき音楽の創造には、形ある物の創造にも展開される共通要素がある。そして、テクノロジーがその距離を縮めている。つまりそれは、形なき・形ありに関わらない、人間の創造性に直結した本質的な視点だと考えている。