DATA
2023/3
CLIENT
PROJECT NAME
black blank / Field notes: Tohoku Research / glow ⇄ grow: globe
TECHNICAL PARTNER
black blank: nomena
PHOTO
Exhibition: Masaki Ogawa
Research: Kohei Shikama / Shintaro Kurihara
VIDEO
Photographer: Masaki Ogawa
Editor: Kenji Ichihara
LINK
863943689京都市京セラ美術館 特別展
「跳躍するつくり手たち:人と自然の未来を見つめるアート、デザイン、テクノロジー」
京都市京セラ美術館で行われた、特別展「跳躍するつくり手たち:人と自然の未来を見つめるアート、デザイン、テクノロジー」に参加した。
本展は、京都市京セラ美術館の企画特別展であり、デザインを軸としてリサーチと思索を重ねてきた川上典李⼦⽒(武蔵野美術⼤学客員教授)が企画・監修し、人間や地球の歴史を意識しながら、柔軟な発想でめざましい活動を展開する日本のアート、デザイン分野の気鋭の20作家(個人・チーム)を取り上げる展覧会。TAKT PROJECTは、展覧会の告知ビジュアルとしても使われた「glow ⇄ grow: globe」に加え、自主研究プロジェクトの最新作である「black blank」を発表。また、「black blank」のベースとなっている自主的に東北各地を巡る「東北リサーチ」についても合わせて出品した。
<出品作品>
black blank
暮らしを便利に…というデザインの目的も、その臨界点を超えたように感じる。
天気を「手の中」でわかる私達は、空を仰ぎ、湿度を感じ、匂いを嗅ぎ、天気を「身体で想像する」ことを放棄してしまったようだ。それは結果的に、テクノロジーが人間の能力に蓋をしてしまったのかもしれない。東北を巡るなかで、宮沢賢治の特殊な創造の方法に出会った。賢治は紙とペンを携え外へ出て、スケッチをする様に記した。そしてそれを「林や野はらや…虹や月あかりからもらってきた…心象スケッチ*」と語っている。全身の感覚が刺激されてこそ、内面に心象が紡ぎ出される…。賢治はそう考えていた。
デザインの目的を、ひたすらに「与える」ではなく、創造性を「引き出す」ものと再定義したい。賢治にとっての自然のように、人工物もまた、人々の心象を引き出すことが出来るだろうか?この作品は、鑑賞者のさまざまな「心象」を喚起することを唯一の目的とした、デザインの原初的な実験である。
* 出典: 『注文の多い料理店』序
Field notes: Tohoku Research
都市がその姿を先鋭化していく過程で、気が付かないうちににこぼれ落ちた「何か」があるように感じる。その何かこそ、私たちが直面するさまざまな問題に向き合う手がかりとなる…。そのような予感に突き動かされ、そのこぼれ落ちた「何か」の手がかりを探るフィールドワークを東北各地で行っている。なぜなら東北には、豪雪をはじめとする厳しい自然や、周縁としての固有の文化があるからだ。しかしそれは、「都市↔︎自然」や「中央↔︎辺境」のような、安直な二項対立やノスタルジーでもなく、具体としての東北を崇め・讃美しようという活動でもない。東北の中に、本来人間が持っていた、自然と向き合う知覚の可能性を再発見し、デザインが向かうべき方角を再考する活動である。
glow ⇄ grow: globe
テクノロジーとは、無色透明なものだと考えている。
どのような色、つまりどんな方向に向けて用いるかで、その意味と世界に与える影響は全く異なるものになる。
自然の脅威から身を守るため、これまで人工物は自然と人間を切り離し、人間が完全にコントロール出来ることを理想としてきた。しかしその主従が逆転し、時に人工物が自然を破壊する結果に至っていることを、多くの事実が物語っている。この作品は、光で固まる液体の樹脂を、プログラミングされたLEDの光で直接固め続けている。つまり、制御という人工的な操作に自然の原理を取り込むことで、人工と自然の融合のプロセス自体をデザインしている。氷塊のように成長するその姿は、光にさまざまな表情を与え、そしてまた、光によって新たな姿を獲得し成長していく。自然と人工、自律と制御、未完と完成といった、人間が境界を引いた事柄をつなぐ存在。それらがつくり出す、新たな環境のインスタレーションである。